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投稿日:2025.08.19.

木漏れ日の朝、手をあたためながら ― 楽寿の杜

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朝の廊下は、まだ少しひんやりしています。カーテンを開けると、外の緑を通ったやわらかな光が床に模様をつくりました。わたしは手をこすって温めてから、「おはようございます」と声をかけます。ボタンがうまくはまらない日は、焦らなくて大丈夫と伝え、途中までをご自身で、最後のひとつだけをそっとお手伝いします。ひとつ留まるたびに、うれしそうな顔がこちらを向いて、その表情が今日の調子を教えてくれる気がします。朝食の香りが漂ってくると、食堂の空気が少し明るくなります。嚥下が心配な方には食形態を整え、苦手な味は別のメニューに差し替えます。お気に入りの器がある方には、必ずその器で。小さな「いつもどおり」をそろえることが、ここでの暮らしの安心につながると感じています。

朝の支度と小さな成功

検温と血圧を確認したあと、背中の丸まりをほどくようにゆっくりと肩をまわします。窓辺の椅子で靴を履くとき、片方ずつ深呼吸を入れると、自然と動きが整います。歩幅が不安定なときは、足元を見ないで前を見ましょうと声をかけ、廊下の目印まで一歩ずつ。目印に手が届いた瞬間の「できたね」が、わたしの胸にも静かに灯ります。ご家族からの電話が鳴ると、「元気してるで」と受話器に向かう声が少し張りのあるものに変わりました。受け取った言葉の温度を、次のケアに生かせるようメモに残し、スタッフ間で共有します。

中庭のベンチで深呼吸

食後のひと休みを終えるころ、中庭の木陰がちょうどいい具合になりました。ベンチに腰かけて風を頬に受けると、呼吸が深くなっていくのがわかります。ローズマリーの鉢を指先で撫で、「いい匂い」と小さく笑う声が聞こえました。立ち上がるときは腕を軽く支え、歩き出す前にもう一度だけ深呼吸。ゆっくりでいいと伝えると、足取りが自然に落ち着きます。部屋に戻る前、わたしは「今夜もぐっすり眠れますように」と心の中でそっと願いました。今日の記録帳には、食事がよく進んだこと、歩行が安定していたこと、そして何より笑顔が多かったことを書き添えて、ページを閉じました。

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