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風鈴の短冊づくりを楽しんだ日
看護スタッフの秋山です。昼下がりのフロアに、チリン、と小さな音が広がりました。今日はみなさまと一緒に、風鈴の短冊づくりを楽しんだ日。窓から差し込む光の下で、色とりどりの和紙を机いっぱいにひろげると、それだけで心がすっと軽くなるのを感じます。
最初は遠慮がちに眺めておられた方も、筆を手にすると表情が変わります。好きな季節、思い出の風景、会いたい人の名前。思い思いの色を選んで、ゆっくりと線を重ねていく時間は、言葉がいらないやさしさで満ちています。細かい作業が難しいときは、わたしが指先をそっと支えて、一緒に筆を運びます。うまく描けたところで顔を見合わせると、いたずらっぽい笑みが返ってきて、胸がじんわり温かくなりました。
作業の合間には、少しだけお茶を。嚥下が不安な方には温度や濃さを調整して、甘いものが得意でない方には香りのよいほうじ茶をお出しします。カップをテーブルに置くたび、カランと氷の音が涼しさを運んできて、外の暑さを忘れてしまいそうでした。水分補給の声かけもいつもどおりに。ひと口ごとに「いい音やね」と風鈴を見上げる視線が、だんだんとやわらいでいきます。
短冊が仕上がったら
短冊が仕上がったら、窓辺に並べてひとつずつ結びつけます。握力に自信のない方には無理をお願いせず、結び目だけをお願いして、最後の引き締めはわたしの役目に。小さな共同作業が終わるたび、思わず二人で拍手をしてしまいました。さっきまで無口だった方が「昔の家の縁側にも、こんな音がしてたな」とふと話しはじめ、そこから家族の思い出や、夏休みの宿題の話にまで広がりました。記憶は、音にそっと手を引かれて、やさしく戻ってくるのだと思います。
日が傾き始めるころ、窓を少しだけ開けると、風鈴が連れてきた涼しさがフロアをひとめぐりしました。うとうとされる方の膝に薄いブランケットをかけ、背もたれに柔らかなクッションを足して、首の位置が楽になるように整えます。風が止むと音も止み、また吹けば鳴る。その繰り返しを、わたしたちは静かに見守りました。
片づけを終えて短冊の控えを台紙に貼り、今日の記録を書きながら、わたしは窓辺の風鈴にそっと目をやります。ここでの暮らしが、ご自宅の延長のように感じられる瞬間が増えていくこと。そのために必要なことは、特別な何かではなく、目の前の小さな心地よさを丁寧につないでいくことなのだと、あらためて思いました。明日はどんな音が、みなさまの一日に寄り添ってくれるでしょうか。わたしたちは、変わらないやさしさでお迎えします。