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わたしの一日のはじまり
楽寿の苑で介護スタッフをしている山口です。窓のカーテンを少しずつ開けると、朝のやわらかな光がゆっくりお部屋に入ってきます。まだ眠たそうなお顔に「おはようございます」と声をかけると、みなさま決まって少し照れたように笑ってくださいます。その笑顔が、わたしの一日のはじまりの合図です。
今朝は風が涼しくて、廊下の先にある中庭の緑がいつもよりくっきり見えました。体調を確認しながらお顔を拭いて、手を温めて、ゆっくりとお着替えをお手伝いします。ボタンが硬い日は、無理に急がず深呼吸をして、できたところまでをご一緒に。うまくいった瞬間の小さなガッツポーズは、いくつになっても可愛らしく、つられてわたしも笑ってしまいます。
朝食の匂いが漂ってくると、フロアがいっそうにぎやかになります。嚥下が気になる方には食べやすい形に整え、苦手な味は別のメニューにさりげなく変えて、今日は「美味しい」の一言をいただけるだろうかと心の中でそっと願います。お好きな器がある方には、きちんとその器で。小さなこだわりが、いつもの生活を守る大切な約束だとわたしは思っています。
食後のひと休み
食後のひと休みのあとは、日当たりのやさしい廊下を歩いて中庭へ。ハーブの鉢を指先でそっと撫でて、香りを確かめる時間が好きだとおっしゃる方がいらして、今日も一緒にローズマリーを選びました。「昔、庭でよく育てたのよ」と教えてくださる声は、朝の空気に溶けてとてもやわらか。ベンチに腰かけて風を頬に受けると、自然と呼吸が整っていくのがわかります。立ち上がるときは腕を軽く支え、歩幅が乱れたら一度止まって、また一歩。急がないことを、ここではいちばん大切にしています。
昼近くになると、電話のベルが短く鳴りました。遠方に住むご家族からの近況。受話器の向こうの声に「元気やで」と返される瞬間、目元の皺がふっと深くなります。わたしはメモに要点を書き留め、ご家族のご希望や気がかりが次のケアに活かせるよう、スタッフ同士で必ず共有します。言葉のひとつひとつの温度まで届けられたらいいのに、といつも思います。
午後は、音楽に合わせて座ったままできる体操を少しだけ。手を伸ばして指を開いて、肩を回して姿勢を整えると、みなさまの表情が明るくなっていくのが本当に不思議です。歌の途中で歌詞を思い出せなくても大丈夫。鼻歌になったって構いません。音に身をゆだねている時間は、わたしたちスタッフにとっても心の栄養になります。
夕方、部屋に戻る前の見守りの巡回を終えると、ほっとした空気がフロアに満ちます。今日も転倒なく過ごせたこと、食事がすすんだこと、よく眠れそうだと話してくださったこと。小さな報告の積み重ねが、明日もこの場所を安心で満たしてくれるのだと信じています。窓の外の空が桃色に変わりゆくのを眺めながら、わたしは「また明日も、ゆっくりいきましょうね」と心の中でそっとつぶやきました。